
当社(株式会社)の代表取締役が永眠致しました。会社の事業継続のため、至急で後任の代表取締役を選任したいのですが、どのように進めれば良いですか。概要は次のとおりです。
・当社の役員は、亡くなった代表取締役以外には存在しません。・当社の株式は、亡くなった代表取締役がすべてを保有しておりました。・この株式についての遺言書はありませんでした。・亡くなった代表取締役の相続人は、配偶者である私と、二人の間の未成年の子が一人です。

たかはし
お急ぎであるということですので、戸籍謄本等の取得により相続人を確認・確定後、ご相談者様を「株式の権利を行使する方」として定めた上で、株主総会にて議決権を行使し、取締役の選任を行っていただくことが良いものと考えます。選任する取締役がお一人であれば、その方が代表取締役となります。
1.唯一の役員様のご逝去の際に必要となる会社のお手続
株式会社(以下、「会社」)の唯一の役員である代表取締役様がお亡くなりになった場合、事業を継続なさるためには、会社には後任の代表取締役が必要となります。
そのためには、株主総会にて取締役を選任なさっていただくことになります。選任した取締役がお一人であれば、この取締役が代表取締役となります。
ご相談の事例では、株主総会で議決権を行使することができる株主様がどなたとなるか、及び、株主総会をどのように開催するかが問題となるほか、株主様のご相続人に未成年者が存在する場合特有の問題がございます。
2.株式の相続人のお手続
ご相談事例のように、会社の株式のすべてを、お亡くなりになった代表取締役様がお一人で所有しておられる会社は少なくありません。
このような場合で、株式をどなたが承継するかについての遺言書が作成されていないときには、取締役を選任するための株主総会において、どなたが株主として議決権を行使することができるのかが問題となります。
株式について、相続人間で遺産分割協議が成立すれば、その内容に基づき、株式を相続した相続人が株主として議決権を行使して取締役の選任をするという方法が考えられます。
しかし、ご相談事例のように、株式の相続人様がご相談者様と、ご相談者様の未成年の子である場合には、未成年の子は遺産分割協議に参加することができません。
また、ご相談者様が未成年の子を代理して遺産分割協議をする行為は利益相反行為となることから、遺産分割協議に先行して特別代理人の選任手続が必要となりますので(民法826Ⅰ)、遺産分割協議が完了するまでには一定のお時間がかかることとなります。
そのため、代表取締役の選定をお急ぎになるご相談事例のような状況では、遺産分割協議により株主を決定するこの方法は、最適な方法とはならないものと考えます。
そこで、遺産分割協議の成立を待たずに議決権を行使する方法により対応することをご検討することになります。
3.共有株式の議決権を行使するには
遺産分割協議の成立前の株式は、相続人全員により共有されている状態になります。
この場合、この株式の議決権行使は、共有者の一人を共有株式の権利を行使する方として決め、この旨を会社に通知したうえで行なうこととなります(会社法106)。
ここで、ご相談者様が未成年の子を代理し共有株式の権利を行使する方を決める行為は、先述の遺産分割協議の場合と異なり、利益相反行為には該当しないとされていますので(最三小判昭52.11.8)、ご相談者様が未成年の子を代理してご相談者様を株式の権利を行使する方と定め、これを会社に通知をしたうえで、ご相談者様が株主総会において議決権を行使し、取締役の選任を行なっていただくことが良いものと考えます。
4.株主総会の開催方法について
唯一の役員様がお亡くなりになりますと、後任取締役様を選任するための株主総会をどのように招集するかが問題となるところです。
ご相談の事例では、①株主様の全員の同意があるとして招集手続を省略して株主総会を開催する(会社法300)、または、②ご相談者様が株主様として取締役選任を提案・同意することで株主総会の決議を省略する(会社法319Ⅰ)ことによりご対応していただくことになります。
5.事前の対策をお考えの場合は
ご相談事例のように、会社の唯一の役員様が唯一の株主様でもある会社である場合、その方に万が一のことが生じますと、従業員様やご相続人様は急ぎの対応を求められる可能性が高く、会社の事業継続に大変な苦労をすることになることが考えられます。
特に、ご相談事例の場合と異なり、ご相続人様間で意見の相違があるような場合には、株式の権利行使をなさる方を決めることや、株式についての遺産分割協議が整わない等により、後任の役員様の選任が遅れ、事業継続に深刻な支障が出てしまうことも考えられるところです。
そのため、このような会社様には、事前に対策をお取りいただくことをご検討なさっていただくことが好ましいものと考えます。
事前の対策には、代表取締役様や会社様の事情に応じて、株式の譲渡、遺言書の作成から株式の信託(民事信託)まで、色々な選択肢が考えられるところですが、取締役様を2名以上にしておく、という方法はシンプルで始めやすく、お勧めできるのではないかと考えます。任期満了による役員様の変更登記の際等にでも、江戸川区の司法書士事務所カデンツァまで、ご相談くださればと思います。
